快体健歩RC net topic vol.9 (2020.5.20) ウォーミングアップとクーリングダウン

快体健歩RC net topic vol.9 (2020.5.20)

快体健歩ランニングクラブ代表 佐々木誠

ウォーミングアップとクーリングダウン

走ることは好き。だからといって勝手に好きなように走るわけにはゆきません。他者、社会、自然に調和していなかったり、悪影響を及ぼしたりするようでは走ってはいけないのです。これは、ランニングに限ったことではなく、人としてどうなの?ということのような気もします。

もう一つの「走ってはいけない」があります。
「走りたい」や「走らなければいけない」という頭と心の訴えに従うものの、肝心な身体の状態が伴っていないのであれば走ってはいけません。(※例外もありますが。)
端的に言えば故障につながるランニングです。
「自己責任だから」と言ってしまえばそれまでですが、思い描いた走りにならない、さらにその先には走れない身体になってしまう恐れがあります。
豊かになれないランニングでは走る価値がありません。

故障しないため、末永く走るため、また、思い描いた走りを実現するには、身体の状態が伴ったランニングをする。すなわち、コンディションに気をつけるということです。
サイクリストはタイヤの空気圧に、スケーターはエッジの精度に、ランナーはシューズ&インソールのヘタリ具合に、そしてどんな種目のアスリートにとっても、身体管理は基本であり大事なことなのです。
走ることが好きならば、コンディショニングの一環として行うジョグやストレッチ、補強運動などもセットで楽しめるようになりましょう。勝ちたい人、納得のゆく結果を残したい人、長く選手生命を維持する人ほど、道具と体のメンテナンスにこだわるものです。

コンディショニングの実践にはいろいろあります。コンディショニングのためのLSDというのもあります。日常生活でもあるアフターケアやデイリーケアもコンディショニングの実践の一つと言うこともできます。
その中から、ウォーミングアップとクーリングダウンを解説したいと思います。
「漠然とやっている」「大切さもやり方もわかっているつもり」というレベルから、理論的に理解することでワンランク上の取り組み方を身に着けてください。

ウォーミングアップとクーリングダウンは、日常の身体状態と運動中の非日常の身体状態との間をストレスなくなだらかに取り持つもので、その目的は次のようにあげられます。
【ウォーミングアップの目的】
 1.なだらかに負荷をかけることで臓器へのストレスを軽減し、パフォーマンスを上げる。結果として障害を防ぐ
2.なだらかに運動器を慣れさせて行くことでストレスを軽減し、パフォーマンスを上げる。結果として故障を防ぐ
3.身体の状態を確認する
4.気象条件や路面などの環境を確認する
5.身体の状態と気象条件と走り方(トレーニング内容)がマッチしているか確認して、必要があれば修正する
6.特にトレーニングの場合には、めざすパフォーマンスを思い描き集中力を高めてゆく
 7.その他、走ることに影響する諸々を確認する(シューズ、ウェア、計器、共走者など)
【クーリングダウンの目的】
1.なだらかに負荷を落とすことで臓器へのストレスを軽減し疲労回復を早める。結果として障害をふせぐ
2.なだらかな有酸素運動の継続で疲労物質の発生を抑える。結果として故障を防ぐ
3.筋組織の硬直を抑える。結果として故障を防ぐ
4.低負荷の有酸素運動の持続で脂肪燃焼効果を高める
5.身体の状態を確認する(必要であればアクティブケアの導入、デイリーケアメニューのオプションを検討する)
6.クールダウンストレッチにより柔軟性を向上させる
7.トレーニングの成果を振り返り、次への期待を膨らませる
 8.その他、走ることに関与した諸々を確認する(シューズ、ウェア、計器、共走者など)

「何をどれほど行えばよいか?」が一番知りたいところかもしれませんが、これらの必要性を自覚しているかどうかも大切なことです。必要と思えばおのずと適切なものを実践するでしょうし、わ からなければ学ぼうとするでしょう。

【ウォーミングアップとクーリングダウンの実践】
何をどれほどやればよいか?
講習会のカリキュラムとして教えていますし、練習会のルーチンとして実践しておりますが、「これがベスト」というものはありません。球技と陸上では違います。長距離と短距離でも違います。マラソンランナーでも人によって異なります。最大のポイントは、ウォーミングアップに続くメイン練習の内容です。負荷の大きさや時間、距離がどうかということです。先に述べた「どんな状態に向かってなだらかに上げるか」の「どんな」に相当します。ですから、同じ人であっても効果的なウォーミングアップはいつも一緒ではないのです。
例えば、身体の状態を確認するという目的ではいつも同じメニューのジョグ、ウォークやストレッチ体操を行うのが理想です。その方が状態の違いに気がつきやすいからです。しかしながら、スピード練習として高い負荷に臨む練習の場合はウォーミングアップのジョグ~ランに費やす時間は多めになるでしょうし、スポット的に(めずらしい・たまにしかやらない)キツイアップダウン走で筋肉に大きなストレスを負った後のクールダウンストレッチは、より伸ばせるバージョンでより時間をかけることが求められます。

根拠となるデータなどはありませんが、私自身のランニングと指導の経験から、市民ランナーに推奨するウォーミングアップとクーリングダウンのメニューと時間配分は次のとおりです。
<ウォーミングアップ>
ウォーク、ジョグ 5分
ストレッチ体操(動的ストレッチ) 8~10分
メイン練習の内容に応じたラン(必要に応じてウィンドスプリントを含む)
<クーリングダウン>
メイン練習の内容に応じたラン(ビルドダウン型)~ジョグ~ウォーク 短くても5分
クールダウンストレッチ(静的) 10~15分以上

【注意点、工夫のポイント】
<ウォーク、ジョグ>
・アップではなだらかに心拍数をあげ、ダウンではなだらかに下げてゆくのが効果的です。人にもよりますが私の場合は、アップのジョグは後半に向けてよりピッチを刻み、ダウンのジョグの後半は大きめのストライドを心がけるとうまくゆく感じです。
・動き作りのバリエーションを取り入れたり、階段やスロープを利用したりすることでフォーム確立や運動器改善(バランス改善など)のトレーニングを兼ねることもできます。
・バリエーションウォークは、アップとダウンそれぞれで動的ストレッチメニュー効果もあります。
・ウォーミングアップのジョグの心拍数で、体調を把握することができます。

<ストレッチ>
・息を止めないこと。静的ストレッチでは、伸ばすときの呼気は細く長く
・骨格筋のどの部位を対象にしているかを理解したうえで、そこに意識を集中させて行うことで効果が高まります
・毎回同じメニューを行うことで骨格筋の状態を確認できます。
・特にクールダウンストレッチでは、骨格筋の状態(張り感など)に応じてやり方を変えたり費やす時間を増やして行います。
・特にクールダウンストレッチに柔軟性の向上効果を求めるならば、よりじっくり、慎重にキツめのギリギリのところを狙うことです。

<その他>
・気温が低い場合は体が冷えないための工夫が必要です。例えば、ウォーミングアップは通常より速い動きを意識する、ストレッチメニューを分割してジョグの間に混ぜる、重要度の低そうなメニューを割愛する、屋内でやる、順番を変えるなどです。
・クールダウンでは、炎症がある場合や、熱中症や低体温症の兆しがある場合は、それらの対処を最優先にすべきです。
・クールダウンは、汗や雨によるウェアの状態、更衣室や入浴・シャワー施設の有無、食事時間など、アフターケア全体を見据えてベストな順番で行います。例えばストレッチは簡易バージョンで済ませて入浴後に再度じっくり行うなどです。

「するべき」、「した方が良い」、「しない方が良い」、「しなくても良い」これらに正解はありません。自分の身体と自分の走りに応えてあげれば良いのです。そうしてできた自分流ウォーミングアップ、クーリングダウンが一番です。
快体健歩で行っているストレッチメニューは、なるべく覚えやすいことや、外で立位のままでもできるように作ったものにすぎませんが、覚えていない方は今後の講習会や練習会で覚えましょう。「なぜ」「どの部位をどのように」と、頭と体の両方で理解してゆきましょう。
マスターしている方はどんどんアレンジしてみましょう。ちなみに、私自身が個人として行う場合は同じメニューでなかったり、クールダウンストレッチは15分を超えてしまうことが多々あります。

さて、60分の時間があります。この時間内でどう走りますか?
もちろん、個々の走る理由、トレーニング頻度と時間、メニューバリエーションによって異なりますが、私の考えでは、メイン練習として走る時間はウォーミングアップとクーリングダウンを除いた25分です。